2015年8月19日水曜日

オオバコの話

「オオバコ」という植物を知っていますでしょうか。
道端で良く見かける雑草です。

生命というものは全般的に様々な特徴を備えつつ、自らを存続させようと進化してきました。
中でも雑草というのは調べると非常に興味深いものがあります。
その名の通り、「雑」に扱われてきたこともあり、実に逞しく、狡猾です。

雑草の多くは踏みつけにも強く、踏まれても全く気にせず成長するものがほとんど。シロツメクサ(クローバー)などはその代表例と言えますが、このオオバコというのはその点において相当ドMな雑草です。










地べたに這うように大きな葉を広げ、画像のような花芽をつけて種子を作ります。
この種子、水分を含むとネバネバになり、人や動物の足の裏、車のタイヤにくっつき、その性質を利用して自らの子孫を遠くに運ばせます。

つまり、踏まれないと困るわけです。

雑草の多くは、野菜のように栽培してもらうわけにはいかないので、いろんな面においてとにかく失敗が許されません。
自分がうまく育たないような場所や時期に発芽してしまってはもうおしまいです。
なので雑草は発芽の段階からかなり条件を絞っています。

オオバコの場合、このような性質からフカフカの土では発芽しません。
むしろ人が良く歩いたり、車が通ったりするような踏み固められた場所で発芽します。
そういう場所でなければ他の植物との競争に勝てず、種を遠くに運べないのです。

yamaanでも、オオバコはフカフカの畑エリアには一株も生えてきません。
気持ち悪いくらい、私がよく歩く場所や車の通り道にだけ分布しています。

植生からいろんなことが見えてきます。








こちらの写真は私の実家の裏口。
今年の6月9日まではここにジャクソンという黒犬がいました。
崖が削られている部分に犬小屋があり、その前で彼はよく吠えていました。

今では犬小屋も撤去され、彼の亡骸は大地に還りつつあります。
ここにかつて彼がいたとは誰も思わないでしょう。

しかし、地面から顔を出してきたオオバコは語ってくれます。

ちょうど犬小屋の入り口だったところからオオバコが分布しています。
生前、彼がよく往復していた場所です。

彼が生きて歩いた地面は踏み固められ、オオバコが発芽するのに適していたのです。
そしておそらくこのオオバコの種も何代にも渡り、彼の足の裏にくっついたのでしょう。


















彼の足跡がこのオオバコです。

彼が舌を出しながらちょこちょこと私の方に近付いてきました。
何度も目にした光景がオオバコの上に蘇ります。

彼によって運ばれた種がまるでお礼を言っているようにも見えて、私からもオオバコにお礼を言いました。

彼の死後から2ヶ月。
オオバコから教えられる彼の痕跡でした。


【オオバコ】(大葉子)
*多年草/オオバコ科オオバコ属
*生薬
「車前草」(全草)・下痢止め、咳止め、止血、強壮
「車前葉」(葉)・腫れ物、排膿
「車前子」(種子)・利尿
*食用可(若葉)・塩茹で後、炒め物や和え物。生のまま天ぷらに。